「自立とは何か?」――ある利用者様との対話から考えた、自分らしい生き方

「きっかけは、一人暮らしへの不安から」

先日、30代の男性利用者様(仮名:Aさん)と面談を行いました。

Aさんはとてもまじめで物静かな方です。慎重に物事を考える性格で、読書や将棋、ギター演奏などを楽しまれています。また、双極性感情障がいを抱えながらも、ご自身のペースでデイケアに通い、生活リズムを整えることに取り組まれています。

今回の面談では、卒業後の一人暮らしについて話題になりました。

Aさんは「一人暮らしをするためには就労しなければならないと思っています」と話してくださいました。しかし、その言葉の裏には大きな葛藤がありました。

「自信がないんです」
「親の期待にも応えられていない気がします」

将来への不安や周囲からの期待を感じながら、自分はどうすればよいのか悩んでいる様子でした。

私はその話を聞きながら、就労や一人暮らしという目標そのものではなく、「Aさん自身はどんな生活を送りたいと思っているのだろう」と考えました。

そこで、「周りの人がどう思うかではなく、Aさん自身はどんな生活をしていきたいですか?」とお聞きしてみました。

「こんな変化がありました」

その問いに対して、Aさんはしばらく考えながら、ご自身の気持ちを少しずつ話してくださいました。

「正直、今は就労について考えられていません」
「今の生活を変えたくないんです」
「デイケアに通いながら生活リズムを整えていきたいと思っています」

さらに、「時期が来たら、またグループホームに戻ることも視野に入れています」とも話してくださいました。

一般的には、一人暮らしや就労が“自立”のイメージとして語られることが少なくありません。しかし、Aさんが本当に望んでいたのは、まず自分の心と体の安定を大切にしながら生活することでした。

面談の中で、自分の本音を言葉にできたことで、Aさんの表情は少しずつ柔らかくなっていきました。

面談が終わる頃には、来室された時よりも明るく、どこかすっきりした表情をされていたのが印象的でした。

もしかすると、自分の気持ちを否定されることなく受け止めてもらえたことで、心の整理ができたのかもしれません。

「その先に見えたもの」

今回の面談を通して、私自身も改めて大切なことに気づかされました。

それは、「本人の気持ちを大切にすること」の重要性です。

支援をしていると、どうしても「就労」「自立」「社会参加」といった目標に目が向きがちです。もちろんそれらは大切なことです。

しかし、それがすべての人にとって同じ意味を持つわけではありません。

世間一般で言われる自立が、その人にとってのゴールとは限らないのです。

Aさんにとって今必要だったのは、無理に次のステップへ進むことではなく、今の生活を維持しながら安心して過ごすことでした。

そして、その思いを引き出すためには、共感を持って話を聴く姿勢が欠かせません。

支援者が答えを示す前に、まず本人の声に耳を傾けること。本音を話せる関係性をつくること。その積み重ねが支援の土台になるのだと改めて感じました。

「この仕事を、誰かに伝えたくなる理由」

福祉の仕事の魅力は、一人ひとりの人生に寄り添えることだと思います。

同じ障害名であっても、考え方や価値観、生き方は人それぞれです。

だからこそ、「こうあるべき」という支援ではなく、その人らしさを一緒に探していく支援が大切なのではないでしょうか。

周囲の期待に応えることだけが人生ではありません。

誰かと比べる必要もありません。

自分にとって心地よい生活、自分らしく過ごせる毎日を見つけることも、立派な人生の目標です。

今回のAさんとの対話を通して、私は改めてそのことを学ばせていただきました。

これからも利用者様一人ひとりの思いに耳を傾けながら、その方らしい歩みを一緒に応援していきたいと思います。

📣 見学・相談、いつでもお気軽にどうぞ

当施設では、利用者様一人ひとりの気持ちやペースを大切にしながら支援を行っています。

「今のままでいいのかな」「これからの生活について相談したい」など、どんな小さな悩みでも構いません。

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