意外と身近な『依存症』
先日、アディクション（依存症）の内部研修を受講しました。
受講のきっかけは「携帯電話」に依存傾向が見られるご利用者様の支援提供について、同僚からスーパービジョン（ＳＶ）を求められた際に、教育的SVが発信できなかったためです。
アディクションに対する自身の理解を深めること、支援ケースにおける参考材料を増やすことを目的に研修を受講しました。
今回のブログも自身の更なる理解を深めるため、研修内容のアウトプットを目的として書き残します。
「私は○〇依存かな？」など不安に感じている方は、是非お読みになって下さい。
アディクション（依存症）とは？
Ａ．特定の何かに心を奪われ、「やめたくても、やめられない」状態になること。
人が「依存」する対象は様々ですが、代表的なものに「アルコール・薬物・ギャンブル等」があります。
このような特定の物質や行為・過程に対して、やめたくても、やめられない・ほどほどにできない状態をいわゆる依存症といいます。
依存症の診断には専門的な知識が必要ですが、特に大切なのは本人や家族が苦痛を感じていないか、生活に困りごとが生じてないかという点です。本人や家族の健全な社会生活に支障が出ないように、どうすべきかを考えなくてはなりません。
※上記文面は厚生労働省HP、「依存症についてもっと知りたい方へ」より
今回参加した内部研修ではスクリーニング検査を用いて自身の依存症度を診断しました。
私は「タバコ」の依存症度を検査してみました。
果たして結果は… 以下画像の通り！タバコ依存症（予備軍）といったところでしょうか…？
驚いたことにタバコの外部刺激は「興奮」に属し、その精神依存度は「大麻」や「LSD」より大きいことが理解できました。
アディクション（依存症）の種類
依存症には３分類があります
※厚生労働省HPには２種類と記載
依存症とはやめたくてもやめられない状態に陥ることですが、その種類は大きく分けて３分類あります。
「物質への依存」と「 プロセスへの依存」そして「人間関係依存」です。
★物質への依存：アルコールや薬物といった精神に依存する物質を原因とする依存症状のことを指します。
依存性のある物質の摂取を繰り返すことによって、以前と同じ量や回数では満足できなくなり、次第に使う量や回数が増えていき、使い続けなければ気が済まなくなり、自分でもコントロールできなくなってしまいます。
代表例として「アルコール」「タバコ」「薬物」などが挙げられます
★プロセスへの依存：物質ではなく特定の行為や過程に必要以上に熱中し、のめりこんでしまう症状のことを指します。
共通していることは、繰り返す、より強い刺激を求める、やめようとしてもやめられない、いつも頭から離れないなどの特徴がだんだんと出てくることです。代表例として「ギャンブル」「インターネット」「買い物」「盗癖」などが挙げられます
★人間関係依存：特定の人間関係にとらわれて逃げる事が出来ない依存症状をさします。
代表例として「ＤＶ」「ストーカー」「性」「恋愛」「共依存関係」などが挙げられます
依存症大国である日本！
研修タイトル内容である「依存症大国日本」というフレーズに衝撃を受けました。
しかし、講義が進むにつれてその通りであると納得することができました。
私はタバコに「依存傾向がある」と自負しています。
自身で行った行動分析でも、仕事中考え事をする時や週間行動計画を練る時、個別支援計画作成時に行き詰まりを感じた時などなど、事あるごとに喫煙所を利用し「一服しながら考えると良いアイデアが天から降りてくる…」と感じていました。
でも、このような感覚や行動は『依存物質によって外部から脳へ異常刺激を受けていたこと』を証明する反応であると結論付けることができました。
タバコを吸うと「良いアイデアが天から降りてくる…」のではなく「興奮」という外部からの異常刺激を受けていたのです。
しかし今の就業環境や生活環境はどうでしょうか？
・前述のように悩みが生じた時は目の前の喫煙所にこもることで、天からアイデアが降ってくる！
・タバコが不足したときは徒歩5分圏内に3件のコンビニで購入できる！
・あぁ～気晴らししたいなあ！お酒飲もう…コンビニで気軽に購入できる！
・あっ！パチンコ屋さん発見！「激熱リーチアクション」が見たい…駅前に3件パチンコ屋さんがある！
・今月も仕事頑張った！おつかれご褒美でキャンプグッズをネットショップで探す！
意志薄弱の私は環境に流されてしまいます…
依存症は「否認の病気」
何年か前にアイドルグループのメンバーがアルコール依存によって事件を起こしてしまった事例がありました。
その際「いつでもやめられると思った…」「いつでも元に戻れると思った…」と語っていました。
依存症の進行が進むと精神的依存・身体的依存も発生します。
外出すれば手軽にお酒を購入することが出来る環境があります。
TVをつければ新発売のお酒CMを目にする事もあります。※誘因
刺激の強い情報や誘因をいつでも・どこでも手に入れる事が出来る恵まれた環境が日本にはあるのです。
果たして、強い意志だけで依存状態から脱却することができるでしょうか？
いいえ、自分の意思ではコントロールできない病気なのだと認めることが重要です。
薬物中毒者の変容とハームリダクション
ベトナム戦争（1960年～1975年）下のアメリカ軍兵士
アメリカ軍兵士の15％がヘロイン中毒に陥っていたとのこと。
戦場下におけるトラウマ（心的外傷）を補うためアメリカ軍がヘロインの使用を容認していたと言われています。
物資の少ない戦場において純度の低い粗悪なヘロインによって、兵士は気分を抑制・鎮静させていたようです。
戦争が終結し国内へ戻り環境改善や専門医療を用いることで30％の方が依存を脱却する事ができたとのことです。
本人の強い意思・最適な治療・誘因が少ない環境統制の３つが揃うことによって脱却できることが理解できました。
ハームリダクションとは？
個人が健康被害や危険をもたらす行動習慣を直ちにやめることができないとき（依存状態）、その行動に伴う害や危険を出来る限り少なくすることを目的としてとられる、公衆衛生上の実践、指針、政策を指した言葉。
現在の依存症治療におけるトレンドであり、直訳すると「害の低減」ということ。
例：注射針交換プログラム：薬物中毒者への感染症予防観点から「注射器の針」を無料で提供している
☞注射針の使いまわしによるC型肝炎やHIVなどの感染症予防や、過剰摂取予防を目的としている
アディクション研修のまとめ
依存症回復のスタートは？：自分の意思ではコントロールできない病気なのだと認めること
依存症回復の必須条件は？：人とのつながりが必須という事実を認めること
日々の支援業務に学びを反映するためには？：
依存状態で生活支障が生じているご利用者様を様々な角度から詳しくアセスメントしながら、ご利用者様の障害特性を踏まえ「利用者様自身が依存を理解し・認めること」ができるよう、動機に働きかける関わりの機会を増やしてゆくことが重要であると学びました。
社会福祉法人SHIP
サクレ江戸川67棟
サービス管理責任者 こばやし